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主と呼ばれたそいつは話し始めた。
「我らはお前等人間が神と呼ぶ存在。私は美の女神アフロディテ、人間共はビーナスと呼ぶがな。最高神ゼウス様が世界を創りしとき人間や他の動物を創ると同時に我らその他の神を生んでくださった」
ビーナスは熱く語っている。だが光輝はきにも止めず。
「神だか女神だか知らねぇが、充とどう関係あんだよ!充を返せ!」
「やれやれ…これだから人間は嫌なんだ…他の者の話を聞こうともしないとわ。まぁ、続けるけど。それで我らが生まれ数世紀が過ぎた、人間共は我らの存在を認識し我らの存在を維持するため生け贄を捧げた。だが…それも長くは続かなかった…数世紀前から生け贄はぴったりと止まった。そのせいで我らの存在が危うくなった」
ビーナスは淡々と話し続ける。光輝はただ聞くしかなかった、いやできなかった。
「だから数世紀前から我らは自分から人間界に出向き、自分の司るものつまり我だと美だ。それに見合う者の魂を食すのだ。つまり……」
ビーナスは一呼吸置き言った。
「お前の弟、充は我の生け贄として選ばれたのだ」
光輝はその言葉に対し脳内処理がついていかない。
「い…けに………え?」
そう呟いたのは充だった。
「そうだ、さぁ行くぞ。月のあるところで儀式を行わなければならないんでね」
光輝はその言葉にぴくりと反応し、ある考えが脳裏をよぎる。
“朝になれば儀式はできない。つまり充は戻る”
「な、なぁ、ビーナスさんよぉ…」
時間稼ぎ、それしかない。光輝はそう考えた。
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