1、あのマウンド

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大和は、キャップのつばを触る。 これは大和から中谷への、ブロックサイン。 意味はただ一つ。 勝負しよう。 それを理解してくれた中谷はミットを景気良く叩いた。 「よしこい!」 中谷がミットを構える。 大和は、しきりに針生を気にするフリをした。 出来るだけ、リスクを減らしたい。 しかし、針生もそれを見越してか、無表情のまま大和を見ている。 しかたあるまい。 大和は意を決して、ゆっくりと息を吐く。 そして、動いた。 その動作は、素早い。 大和の得意技である、クイックモーションからの投球。 磯島の体勢が少しくずれているようだ。 大和は指先に力を込める。 そこから、ストレートを放った。 それと同時に、後ろで走る音が聞こえる。 磯島はバントの構えを見せない。 単独スチールか。
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