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正直に言ってしまえば、絶対に助手席は座りたくない。
好太も表情から同じ事を考えているのだと読み取れる。
しかし、二人とも後部座席に座るのは明らかに不自然。
どちらかはいけにえにならなくてはならない。
「……どうする?」
好太は額に一筋の汗を流した。
大和は握りこぶしを前に出す。
好太も大和の意図を理解して手を出す。
「最初はグー。ジャンケンポン!」
好太はチョキを出している。
一方の大和は、五指を完全に開いていた。
好太の勝ち。
「よろしく頼むぜ」
好太は大和の肩を叩き、さっさと後部座席に乗り込んだ。
残された大和は自分の手を見る。
それから一つ大きく息を吐き、意を決して助手席に乗り込んだ。
そんな大和を、カーステレオから流れるクイーンの歌が包み込む。
なんとも景気の良い曲調だ。
洋楽に疎い大和でも聞いたことがある。
確か、前にドラマ主題歌だったと思い返していた。
「じゃ、行くわよ」
三人を乗せた車は、予鈴の聞こえる青山堂高校の駐車場から出発した。
道中、美鈴は取り留めの無い事をいつものテンションで喋る。
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