10、Ready up

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「でも、私はあなたたちみたいに期待されて投げては無かったの」 「どういうことですか?」 「私たちのチームはとっても強かったけど、ピッチャー向きな人が誰もいなかった。だから、私しか投げられないってことになって、ピッチャーになったの。恐かったわよ。負けたらピッチャーのせいにされそうだったから。皆自分のプレーに必要以上の自信をもっていたのよ」 「ひどい話ですね」 大和は美鈴が少しかわいそうに思えた。 「でも、そのおかげで私も上手くなった。ソフトボールで高校にも行けたしね」 「高校はどうでした?」 好太の問いに、車内は一瞬静かになった。 「コーチと考えが合わなくてね。今まで教わって来たこととのギャップがありすぎて、辛かったわ。そして、肩を怪我しちゃった」 好太は気まずそうに首をすくめた。 「だけど、おかげで外野に戻れて、最後の大会はレギュラーにまでなっちゃったのよ。嬉しかったな」 美鈴は明るく話した。 「それで私はスポーツ学を自分で勉強しながら教員免許をとって、今に至るわけ。だから、お兄ちゃんには感謝しなきゃ」 「兄がいるんですか?」 「大和君のミットの持ち主だった人よ、私の兄は」
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