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「でも、私はあなたたちみたいに期待されて投げては無かったの」
「どういうことですか?」
「私たちのチームはとっても強かったけど、ピッチャー向きな人が誰もいなかった。だから、私しか投げられないってことになって、ピッチャーになったの。恐かったわよ。負けたらピッチャーのせいにされそうだったから。皆自分のプレーに必要以上の自信をもっていたのよ」
「ひどい話ですね」
大和は美鈴が少しかわいそうに思えた。
「でも、そのおかげで私も上手くなった。ソフトボールで高校にも行けたしね」
「高校はどうでした?」
好太の問いに、車内は一瞬静かになった。
「コーチと考えが合わなくてね。今まで教わって来たこととのギャップがありすぎて、辛かったわ。そして、肩を怪我しちゃった」
好太は気まずそうに首をすくめた。
「だけど、おかげで外野に戻れて、最後の大会はレギュラーにまでなっちゃったのよ。嬉しかったな」
美鈴は明るく話した。
「それで私はスポーツ学を自分で勉強しながら教員免許をとって、今に至るわけ。だから、お兄ちゃんには感謝しなきゃ」
「兄がいるんですか?」
「大和君のミットの持ち主だった人よ、私の兄は」
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