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「お久しぶりです、久米さん」
「お、大和じゃないか。久しぶりだな」
久米は柔和な笑顔を大和に向けた。
堂々とした体格で、身長は大和よりも大きい。
その表情は穏やかで、大和達が入学したころと変わりなかった。
「大和、青山堂にいったらしいな」
「あ、久米さん知ってたんですか」
「人から聞いていたからね。ところで、高校の打者はすごいだろ。俺も苦労しているよ。大和も結構打たれているんじゃないか?」
「実は、今キャッチャーをしているんですよ。おかげでこうなってます」
大和は左手を広げ、久米に見せた。
痣やマメだらけで、見るからに痛々しい。
久米の笑顔の中にゆっくりと驚きが混ざった。
「そうだったのか。じゃ、さらに大変だな。硬式球ならぶつかると痛いだろ」
「はい。でも、やってみたら凄く楽しくて、痛みも最近は感じませんよ」
「そうか、それなら良いな。それにしても、大和も湯島に来るかと思って、皆に自慢していたんだがな。恥をかいたよ、来ないじゃないかってね」
久米は頭をかいて苦笑した。
口ではそう言っているが、目を悲しそうにふせている。
大きな体が小さく見えた。
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