10、Ready up

21/40

1941人が本棚に入れています
本棚に追加
/604ページ
「お久しぶりです、久米さん」 「お、大和じゃないか。久しぶりだな」 久米は柔和な笑顔を大和に向けた。 堂々とした体格で、身長は大和よりも大きい。 その表情は穏やかで、大和達が入学したころと変わりなかった。 「大和、青山堂にいったらしいな」 「あ、久米さん知ってたんですか」 「人から聞いていたからね。ところで、高校の打者はすごいだろ。俺も苦労しているよ。大和も結構打たれているんじゃないか?」 「実は、今キャッチャーをしているんですよ。おかげでこうなってます」 大和は左手を広げ、久米に見せた。 痣やマメだらけで、見るからに痛々しい。 久米の笑顔の中にゆっくりと驚きが混ざった。 「そうだったのか。じゃ、さらに大変だな。硬式球ならぶつかると痛いだろ」 「はい。でも、やってみたら凄く楽しくて、痛みも最近は感じませんよ」 「そうか、それなら良いな。それにしても、大和も湯島に来るかと思って、皆に自慢していたんだがな。恥をかいたよ、来ないじゃないかってね」 久米は頭をかいて苦笑した。 口ではそう言っているが、目を悲しそうにふせている。 大きな体が小さく見えた。
/604ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1941人が本棚に入れています
本棚に追加