10、Ready up

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大和が見た、というのは久米の表情。 久米の顔にマウンド上では決して現れることの無い、恐怖が浮かんでいた。 久米はいつも変わらない表情のまま投げ続けることで有名だ。 実際に、磯島の中学、右田の一つ上の代ではそういう笑い話もあったと前に聞いている。 やつは人間じゃ無い。 マジ、怪物だ、と。 「先生の声はあの久米さんですらビビらせたんだぜ、おい」 好太が囁く。 隣に美鈴がいるので、大きな声では話せない。 大和の声も蚊が鳴くような声だ。 「そうだね。それで、思ったんだけどさ」 「なんだよ?」 「審判を先生にしてもらったら、相手チームは力を出せずに終わるんじゃないかな」 一瞬の間合いの後、好太はプッと吹き出した。 多分、美鈴が審判をしている光景を想像してしまったのだろう。 「それは無理よ」 目の前の好太が固まった。 「審判資格もってないから」 大和が美鈴を見ると、視線がぶつかった。 いつもの表情。 しかし、大和からとめどなく流れていく冷や汗。 そんなに焦る必要も無い場面ということはわかっている。 しかし、本能が危険だと告げていた。
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