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「え、何が?」
「疲れた顔してるよ」
「そう? まぁ疲れてないことはないかな」
大和は力無く笑った。
「やっぱり、まだキャッチャーに慣れないの?」
ふいに結城が聞いた。
「そんなことは無いつもりだよ。そんな風に見えたかな?」
「うーん……」
結城はそうとも違うとも取れる返事をした。
大和と結城がたどたどしい会話をしている頃、野田は学食で教科書を開いていた。
その向かいには橘も座って勉強している。
和やかな雰囲気の学食の中、二人は独特な緊張感を漂わせていた。
「野田君、聞いてもいいかな?」
野田が前を向いた。
橘は歴史の問題を野田に見せたが、野田の動きが固まる。
「何か不都合が?」
「分からない」
「え?」
「暗記は苦手だ」
野田は抑揚の無い声で答えた。
「意外だね、野田君にも関知していないことがあるのか」
「だから勉強している」
「それはそうだね」
橘はふっと笑った。
よく考えれば、授業中も野田は隣で勉強しているし、こうやって放課後も勉強している。
こんな感じで他人と一緒に勉強するのは初めてじゃないかと、橘は思った。
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