10、Ready up

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「キャッチャーは川上君と大和君の二人。初めてのポジションのファーストに、野田君以外にも沢山の選手がいる俺はどうしたらいいんすか? ずっと伝令すか?」 加藤は怒っていると言うより困惑しているようだ。 加藤も野田とは違うが、相当なポーカーフェイス。 いつもひょうひょうとしていて、大和は加藤が何を考えているか分からないことがあった。 そんな加藤が漏らした本音。 大和の心に強く響いた。 「さて、皆そういうことなのかしら?」 この重たい空気の中、美鈴はどこ吹く風。 全く変化なく言いのけた。 「さて、まず大牟田君。あなたは久礼多中学で投手だったわね」 大牟田は黙って頷いた。 「あなたは上背があって角度のある直球を投げることができる。だけれども、あなたの伸び代は打撃にあるわ」 美鈴はフフフと笑う。 「あなたの投球に逆らわない打撃。これは天性のものよ。逆をいえば、あなたはピッチャーとして見られていたからこそ、その素質を見逃された。違う?」 誰にもそれを違うとは言えなかった。 大牟田の打撃センスの高さは全員が理解している。 そしてまた、大牟田がどうしようもないノーコンピッチャーだったことも周知の事実。
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