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角度があるとは言え、極度のノーコンに速くないストレート、そして、目立たない変化球。
「勿論、これからの努力次第では青山堂のエースになれるかもしれない。けれど、恐らく、高校三年間のうちに芽が出る要素が高いのは、外野よ」
「でも……」
「そこまでピッチャーをしたいならば仕方ないわ。良いピッチャーになれるよう、私も全力を尽くす。だけど、大牟田君は戻れないと思うわよ」
「なんでですか?」
「だってあなたは、もう外野で野球をして、上位打線を打ってしまったんだから」
美鈴の言っている意味が、大和には良く分かった。
新しいことに挑戦する事の昂揚感。
何度も失敗を繰り返す悔しさ。
そして、新しいことができた時の達成感。
それは全て新しく始めたキャッチャーから得たものだ。
「打者には大きく分けて二つのタイプがいるわ。ポイントゲッターとチャンスメーカー。ポイントゲッターは、努力だけでは勤まらない。そして、あなたには可能性があるわ」
大牟田は勢いを無くし、座った。
「川上君は残念だけど、打撃がネック過ぎる。足も速くないわね」
川上は下を向いた。
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