10、Ready up

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「だけど、あなたの柔らかな手首の使い方と捕球から送球までのスピード。これは十分武器になるわ」 川上は照れ笑いを浮かべながら鼻の頭をかいた。 「加藤君は悩んだわ。あなたは技術も体力もあるけど、少しプレーが幼稚。ピッチャーやキャッチャーにしようかとも思ったけれど、初めてやる分には荷がおもすぎる。ファーストで打者と近づいて守備をしていれば、気がつくことも多い」 「分かったっす!」 加藤は上機嫌と言った感じで座った。 「まだ何か聞きたい人がいる?」 誰も手を上げない。 そして、さっきまでの息苦しいような雰囲気も消えた。 「皆に言っていないかもしれないけど、私の目標は甲子園に出ること」 どこかのスポ根青春漫画みたいだと大和は思った。 「そして、プロで活躍する選手を育てる。これが夢なの」 また雰囲気が変になった。 「誤解が無いように言うけど、その為に一人の選手を特別扱いするということは無いわ。ただし、皆変わっていかない限り、甲子園なんて夢のまた夢」 美鈴は一呼吸置いた。 全員が美鈴の話しを注意深く聞いている。 美鈴にそういう力があるのだと大和は思った。
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