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「だけど、あなたの柔らかな手首の使い方と捕球から送球までのスピード。これは十分武器になるわ」
川上は照れ笑いを浮かべながら鼻の頭をかいた。
「加藤君は悩んだわ。あなたは技術も体力もあるけど、少しプレーが幼稚。ピッチャーやキャッチャーにしようかとも思ったけれど、初めてやる分には荷がおもすぎる。ファーストで打者と近づいて守備をしていれば、気がつくことも多い」
「分かったっす!」
加藤は上機嫌と言った感じで座った。
「まだ何か聞きたい人がいる?」
誰も手を上げない。
そして、さっきまでの息苦しいような雰囲気も消えた。
「皆に言っていないかもしれないけど、私の目標は甲子園に出ること」
どこかのスポ根青春漫画みたいだと大和は思った。
「そして、プロで活躍する選手を育てる。これが夢なの」
また雰囲気が変になった。
「誤解が無いように言うけど、その為に一人の選手を特別扱いするということは無いわ。ただし、皆変わっていかない限り、甲子園なんて夢のまた夢」
美鈴は一呼吸置いた。
全員が美鈴の話しを注意深く聞いている。
美鈴にそういう力があるのだと大和は思った。
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