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好太は質問した磯島の両肩をガシッと掴んだ。
「違うんだ、磯っち。別に応援されないことが悔しいんじゃないんだ」
「ふーん」
磯島は微笑んだ。
噂によると、既に出来始めた私設磯島応援団がこの球場に乗り込んで来ているらしい。
本人はいたって無関心だが。
「ほら好太。磯島君困っているでしょ」
大和は好太を磯島から引きはがした。
「それにしても、雨止まないなぁ」
空模様からすると、試合一杯降り続けていそうだ。
気温があまり上がっていないので蒸すような不快さは無い。
だが、ピッチャーが集中力を通常よりも消耗しやすいのは明らか。
ボールと指の掛かり具合が普段と変わり、ロージンも湿っている。
どこにいっても好太の体力は心配の種であった。
「はい、整列して」
審判が出て来たのを見て、美鈴が声をかけた。
野球部全員の表情が引き締まる。
それは好太も例外では無い。
大和も、自分の緊張が高まっている事を感じる。
でも、それは少しも嫌な感じでは無かった。
形容しがたい期待感。
大和達野球部員は降りしきる雨の中、一斉にグラウンドへ飛び出した。
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