11、夢の始まり

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「なんのサインを送ったんですか?」 「いつも通りに打て、よ」 「……ん?」 それをサインと呼ぶのだろうか。 そんな事を思っていたのが大和の顔に出ていたらしく、美鈴は説明してくれた。 「今まで戸部君には『内角のストレートを引っ張れ』って指示を出していたの。そこまでの制限をかけていれば、読みが当たったときにヒットを打てる可能性はかなり高くなる。そして何より、相手の球質を調べることが出来るでしょ」 説明の間にも戸部は際どいボールをカットし、ボール球には手を出さない。 しかし、相手もなかなか崩れず、ストレートだが、確実に際どい所をついてくる。 「長いな……」 「戸部が球数を稼いでんじゃねーの?」 好太の言う通りだとは思うが、少し違和感を感じる。 普通に打っているように見えるが、ボールが前に飛んでいないのだ。 ファールが全てバックネット方向に飛んでいく。 カットしているというより、タイミングがあっていないようだ。 「頑張れ……」 大和は戸部を見つめた。 真剣な表情をしている。 そんな戸部に向かって、ピッチャーが振りかぶった。 戸部もタイミングを合わせる。
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