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「なんのサインを送ったんですか?」
「いつも通りに打て、よ」
「……ん?」
それをサインと呼ぶのだろうか。
そんな事を思っていたのが大和の顔に出ていたらしく、美鈴は説明してくれた。
「今まで戸部君には『内角のストレートを引っ張れ』って指示を出していたの。そこまでの制限をかけていれば、読みが当たったときにヒットを打てる可能性はかなり高くなる。そして何より、相手の球質を調べることが出来るでしょ」
説明の間にも戸部は際どいボールをカットし、ボール球には手を出さない。
しかし、相手もなかなか崩れず、ストレートだが、確実に際どい所をついてくる。
「長いな……」
「戸部が球数を稼いでんじゃねーの?」
好太の言う通りだとは思うが、少し違和感を感じる。
普通に打っているように見えるが、ボールが前に飛んでいないのだ。
ファールが全てバックネット方向に飛んでいく。
カットしているというより、タイミングがあっていないようだ。
「頑張れ……」
大和は戸部を見つめた。
真剣な表情をしている。
そんな戸部に向かって、ピッチャーが振りかぶった。
戸部もタイミングを合わせる。
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