11、夢の始まり

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キャッチャーがミットを叩いた。 バッターに集中しろとでも言いたいのだろうか。 しかし、それは無理な話だ。 まず、ランナーが戸部。 あそこまでしっかりとリードを取られているのだから、気にならないはずが無い。 もしかりに戸部に気を使わなかったらどうなるか。 それこそやりたいほうだいだ。 菅原が投球動作に入る。 振る気持ちは無いが、磯島もタイミングを合わせた。 第一球。 内角高めの直球だ。 磯島は体を反らして避ける。 勿論、ボール球だ。 磯島は一端打席を外し、美鈴のサインを見る。 さっきと変わらない。 磯島は構えた。 その後、ストライク、ボールと続き、カウントはワンツー。 戸部はまだスタートをきっていない。 第四球目。 菅原がクイック気味に始動した瞬間、戸部が走り出した。 しつこく牽制された後とは思えない、完璧なスタート。 ボールは磯島の仮定ストライクゾーンをかすって飛んでくる。 とりあえず、磯島はワンテンポ遅れてバットを振った。 キャッチャーは二塁に送球するが全然間に合わない。 戸部は楽に二塁を盗んだ。
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