11、夢の始まり

8/54

1941人が本棚に入れています
本棚に追加
/604ページ
ノーアウト二塁のカウントツーエンドツー。 追い込まれているが、絶好の状況だ。 冷静に打席を外し、美鈴の指示を仰ぐ。 美鈴からの指示は、引っ張れというもの。 追い込まれているので、もう山勘をはることは出来ない。 どんな球であれ、右側に転がしていきたい。 打席をならし、菅原を見る。 今までの球は、全て直球。 速いが、コントロールは良くない。 ボール球もそれと分かる球で、細かいコントロールの鈍さがよく分かる。 ここで変化球を投げてくる可能性はいかほどだろうか。 磯島は考えてみたが、ほとんど無いように思えた。 菅原がセットポジションに入る。 磯島は身体の力を抜き、ボールにタイミングを合わせる。 第五球目。 バットを振る。 鈍い音が響いた。 ボールは一二塁間を鈍い球足で転がる。 セカンドがとれるか、かなり微妙な位地。 バッターランナーの磯島は数歩でトップスピードに乗る。 ただ無心に足を動かし、前へ前へと。 視界の端にゴロの処理でもたつくセカンドの姿。 それでもタイミングは微妙だ。 磯島は必死に走る。 セカンドがボールを掴み、投げた。
/604ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1941人が本棚に入れています
本棚に追加