11、夢の始まり

10/54

1941人が本棚に入れています
本棚に追加
/604ページ
大和は打席に入る前に、一つ屈伸をする。 「お願いします」 審判に頭を下げてから、打席に入った。 いつも通りの力を出すため、いつも通りの事をする。 これは大和がリトルでやっていた時から心情としていた。 そしてもうひとつ。 大きいのは狙わず、確実に外野手の前に運ぶ。 大事なのは大飛球を打つのでは無く、力強くバットを振る事。 ただそれだけ。 やることを明確にしているからこそ、打席に入っても緊張しない。 大和は構え、ピッチャーの菅原を見た。 ロージンを付けている。 この場面、誰よりも一番苦しいのは、他でも無い菅原。 データが無い無名高の相手に先取点を取られた。 最終的には自分達が勝つだろうと信じているだろうが、いい気分がするはずが無い。 力でねじふせてくる。 恐らく、配球的には野田と同じ傾向。 菅原がセットポジションから始動した。 大和もタイミングを合わせる。 狙うは、外角のストレート。 そして、読み通りのボールが来た。 迷わずにバットを振り抜く。 ボールはバットの芯にあたり、勢い良く飛んで行った。
/604ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1941人が本棚に入れています
本棚に追加