11、夢の始まり

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大和は全速力で走り出す。 磯島のような駿足であれば、もっと余裕を持って走れるのだろうが、生憎大和は鈍足だ。 せっかくバットがボールにぶつかったのだから全力で走らないでどうすると、昔好太が言っていて、何故か凄く共感した大和はいつでも遅い足を全力で動かしている。 大和はファーストベースを駆け抜け、減速しながらボールの行方を探したが、どこにもボールが無い。 そんな大和に一塁ベースコーチャーの加藤が近寄る。 「何してるんすか、走らなきゃ」 「でもボールが……」 「あれ、見てなかったんすか? ほら、ボールはあそこっすよ」 加藤が指差した先は、雨で人が疎らになっているアルプススタンド。 大和が青山堂高校のベンチを見ると、全員が立ち上がっていて、磯島がホームベースで待っている。 「ホームラン?」 「特大の。さ、走って」 加藤は微笑み、コーチャーズボックスに戻った。 そして、大歓声が球場内を包み込み、大和もやっと自分がホームランを打った実感が伴ってくる。 正直、長打を狙う気は無かったのでまだ信じられない部分があるが、ゆっくりとダイヤモンドを一周した。
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