11、夢の始まり

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「なるほど……」 美鈴はいつもの穏やかな様子に戻り、手元の紙を持ち上げた。 それはスコアシートで、これは控え外野手の今井が書いていたものだろう。 ふと大和が今井を見ると、スコアシートが無いので岩崎の打席を必死に暗記していた。 「今までの配球がこれに書いてあるのだけれど、凄く面白いデータがあるの。今日の菅原君、ストレートしか投げていない」 青山堂ベンチはざわめくが、選手一人一人がその意味を何となく理解していた。 「ただ、そういう中でもちゃんと皆が打ててる。初めての公式選なのに、素晴らしいプレーをしている。それは、かなり相手も計算違いだった。そして」 美鈴は大和を見る。 「初球を、しかも完璧とは言えない当たりであるにも関わらず出たホームラン。私に言えることは、今すぐにとは言えないけれど、菅原君が近い内に変化球を交え始めてくるはず。それはおそらく打て無いでしょう。ただし、打てないからと言って焦っちゃダメよ。そうならなければ、勝てる可能性はぐっと大きくなる」 そういって美鈴はスコアシートを今井に返し、また試合を観戦しだした。 大和も美鈴に言われた意味を考えながら、プロテクターをつける。
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