1941人が本棚に入れています
本棚に追加
/604ページ
大和は覚悟を決めてストレートのサインを出し、内角の低め、ボール半分がストライクゾーンに入るくらいの所にミットを出した。
これは好太だからこそできる、かなり積極的なコース。
ちょっとでもコントロールが狂えば、デットボールや長打に成り兼ねない。
それでもあえてここに投げてもらうのは、これしかないと言っても過言ではない好太の最大の強さ、コントロールを最大限に使いたかったからだ。
好太はいつもと変わらず大きく振りかぶり、ストレートを大和のミット目掛けて投げ込む。
少し高いが、内外のコントロールは問題ない。
バッターはバットを振り抜くと、鈍い音が出た。
ボールはぼてぼてのファーストゴロで、ファーストの野田が普通に裁き、ベースカバーに入った好太へ送球してアウトを取った。
アルプススタンドから、小さいけれども歓声が聞こえてくる。
「ワンナウトー」
好太が内野に声をかける。
好太も内野の守備がいつもより硬い雰囲気になっているのに気がついているのだろう。
こうして間を取ることで少しでも皆の緊張をほぐそうとしているのだと、大和は気付いた。
次の２番、３番も好太は丁寧に低めへ投げ、守備の乱れも出ずに打ち取った。
最初のコメントを投稿しよう！