11、夢の始まり

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「好太」 ボールを塚原に渡そうとしない好太を、野田がいつもより優しい声で促す。 いつもとかなり違う様子なので、マウンドに集まった内野陣も好太に対して同情的な空気が流れている。 「俺、まだ投げられるぜ? なんで交代なんだよ?」 好太が少し掠れた声で、誰にともなく尋ねる。 誰も答えず、ただ全員が黙った。 「ったく、なんか皆元気ねーな。そんなふうにされると、俺も文句の一つも言えねーじゃん」 好太はいつものように笑い、ボールを塚原に渡す。 そして、マウンドから降りた。 「悪いな、なんとか守りきってくれ」 好太は振り返らずにそういって、一足先にベンチに戻る。 その後ろ姿を見ていた大和だったが、プロテクターを外してサードの守備につかなくてはいけない。 岩崎と一緒にベンチに戻り、プロテクターを外し、サード用のグローブを身につける。 横目で見ると、好太は美鈴の横に座っていた。 好太は今、何を思いながら美鈴の横に座り、これから試合を見ながら何を思うのだろうか。 好太のユニフォームは、先程のプレーで泥だらけ。 そんなことを気にしているようなそぶりを見せない。
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