11、夢の始まり

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「次の試合までに上手く投げられる可能性はかなり低い。けれど、ごまかし程度で良いから、これから練習していきましょう」 美鈴は一旦そこで切り、「それから」と続ける。 「次の試合、好太君は中継ぎで行くから、そのつもりで」 美鈴はさらりと言ったが、そこには有無を言わせない空気が漂っていた。 「……はい」 「じゃあ、好太君はここまで。お昼を食べて来て」 好太は黙礼すると、その場から去って行った。 大和としては、こんな場所で美鈴と二人になるのは嫌だったし、好太の様子も気掛かりである。 出来れば一緒にここから離れたかった。 「さて、大和君。あなたはツキとか流れって考えてみた事ある?」 「え……。……考えた事はありません」 いきなり変な質問をされ、面食らった。 「そうね、そういうのって普段の練習では意識されないから、考えることは無いかもしれない。でも、間違いなく、そういう存在はあるでしょ」 「はい」 流れとかツキがあったからこそ、昨日の試合で番狂わせを演じたのは間違いない。 野球に限らず、真剣勝負ではそういった流動的なものが勝敗を分ける場合はたくさんある。
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