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「あともうひとつ」
大和は「まだあるのか」と口に出しそうになったが、なんとか堪えた。
「塚原君に交代したとき、大和君も代えた。それは、あなたのリードが技巧派の好太君ならいいけど、本格派の塚原君には厳しいと思ったから。次の試合はそうならないと思うから、しっかり好太君のリードも考えていてね」
美鈴は「行って良いわ」と言い、大和は美鈴に背を向けた。
「あ、そうそう、最後にもう一つ。あなたには次の試合、また四番を任せるから頑張ってね。あなたの打撃、楽しみにしているわ」
そういって美鈴は立ち上がり、職員室へと歩いて行った。
大和もゆっくりと野球部の部室へと歩いていく。
「リードねえ……」
大和にすれば、四番を打つと言うよりもずっと、好太と塚原のリードを考える方が難しかった。
好太のリードについて、美鈴は悪くないと言っていたが、本当にそうであったのだろうか。
確かに有名な水尾をとても良い内容で抑えた。
だが、完投どころか、5回持たなかったのである。
これではとてもじゃないが良いピッチングとは言えないと思う。
好太や美鈴は雨や緊張と言っていたが、本当にそれだけなのか。
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