11、夢の始まり

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「先発が良かったか?」 大和が聞こうとしたら、野田が簡潔に聞いた。 「そりゃ、そうだろ。ピッチャーなんて先発完投が華だと思うもんだ」 「俺は思わなかったけどね」 大和は苦笑いを浮かべた。 「でも、仕方ねーとは思うんだよなー。ピッチャーとはいえ、全く打てねーし」 好太らしくなく、自嘲気味に言う。 「確かに、好太は打てないもんね……」 プロならばともかく、高校生ならばピッチャーだから打てないということはない。 むしろ四番でエースという選手が今までにもたくさんいた。 そう考えれば、塚原と好太を比べた場合、塚原先発案の方が有力かもしれない。 抜群の安定感でゲームを作る好太だが、必ず打線に切れ目を作ってしまう。 それに対し、塚原は破壊力のあるピッチングに打撃も出来る。 そう聞けばやはり、好太を火消し役に回す方が合理的に思えるのも無理はない。 「経験とコツ」 「は?」 「その二つで打撃は上手くなる」 とだけ言い、野田はトレーニングルームから出て行った。 恐らく、飲み物でも買いに行ったのだろう。 残された二人はとても変な空気に包まれた。
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