11、夢の始まり

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橘は蚊の鳴くような声で言い、一層小さくなった。 「このアイスコーヒーは野田君が?」 「飲んでいい」 「いや、でも……」 「俺は飲んだからもう飲めない。飲んでくれ」 「そうか……。ありがとう」 橘は缶を両手で持って飲み出した。 野田は席から立ち上がり、背伸びをする。 まだトレーニングルームで大和と好太は筋トレをしているだろうから、そろそろ戻らなくては。 そして、回りの視線があまりにも痛い。 恐らく、橘に何かいたずらしたとでも思われているようで、悪意と好奇が入り交じったような視線だ。 余り気にしないが、なかなかいい気分ではない。 「俺は行く」 「あれ、もうかい? もう少しゆっくりしていけば良いじゃないか」 「悪い、まだ練習の途中だから」 「そうか……」 橘は肩を落とした。 「勉強頑張れ」 「ありがとう、頑張るよ」 橘の返事を聞き、学食を出て行った。 歩きながら野田は、橘の意外な姿を思い出して微笑む。 野田がトレーニングルームに戻ってみると、好太と大和が汗だくになって体を鍛えていた。
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