11、夢の始まり

44/54

1941人が本棚に入れています
本棚に追加
/604ページ
「今日はもう……な」 野田が尋ねると、好太がへばったようで、辛そうに言った。 「じゃ、今日は帰ろうか」 大和がやっと腕立て伏せをやめ、立ち上がった。 それからトレーニングルームに備え付けのシャワールームで汗を流し、教室で服を着替える。 一足先に準備の出来た野田は、すまなそうに口を開いた。 「悪い、今日は用事がある。先に帰っててくれ」 大和も好太も直ぐに了承してくれて、特に好太は「橘ちゃんと仲良くな」などと余計な事を付け加えた。 そんな事を背中で聞きながら、教室を出る。 再び学食に着くと、先ほどより大分人が減っていた。 遅い時間だから無理もない。 野田ももし家にうるさくて世話がやける弟達がいなかったのであれば、家で勉強するのが普通だっただろう。 ふと見るといつも座っている席に、まだ橘はいた。 上体を起こして勉強しているように見えたが、近付いてみるとどうやらこの体勢で眠っているらしい。 器用なものだ。 野田は橘の向かいに座り、教科書を取り出す。 そこから2時間、野田は集中して勉強したが、橘は一切目を覚ますことは無かった。
/604ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1941人が本棚に入れています
本棚に追加