11、夢の始まり

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「塚原は大分チェンジアップにも慣れ、安定してきました」 「いいわねぇ。じゃ、塚原君投げてみて」 美鈴の声が聞こえたようで、塚原はセットポジションに入る。 塚原がボールを投げると、ストレートより大分山なりの遅いボールが飛んでいく。 「なるほどね………」 川上がボールを受けると、美鈴はそう言って静かになった。 「ボールのクオリティーは悪くないわ。だけど、ちょっとフォームが良くない。塚原君、チェンジアップを投げるときに少しフォームが変わるって気がついていた?」 塚原は首を振る。 それもそうだろう。 ついさっきそのチェンジアップを受けていた大和でさえ、どこが違うのかわからないのだから。 「左手がストレートと比べて縮んでいるし、テークバックも小さいわ。ストレートとチェンジアップを投げてみて」 塚原は言われた通り二つのボールを交互に投げた。 確かに言われて見れば左手も右手も縮んでいて、こじんまりとした印象をうける。 しかし、それがなんだと言うんだ? 確かによくみれば違うが、それはあくまで最初から違うと考えて凝視をしたから。 試合中に気がつかれる可能性はほとんど無いだろう。
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