1941人が本棚に入れています
本棚に追加
/604ページ
「塚原は大分チェンジアップにも慣れ、安定してきました」
「いいわねぇ。じゃ、塚原君投げてみて」
美鈴の声が聞こえたようで、塚原はセットポジションに入る。
塚原がボールを投げると、ストレートより大分山なりの遅いボールが飛んでいく。
「なるほどね………」
川上がボールを受けると、美鈴はそう言って静かになった。
「ボールのクオリティーは悪くないわ。だけど、ちょっとフォームが良くない。塚原君、チェンジアップを投げるときに少しフォームが変わるって気がついていた?」
塚原は首を振る。
それもそうだろう。
ついさっきそのチェンジアップを受けていた大和でさえ、どこが違うのかわからないのだから。
「左手がストレートと比べて縮んでいるし、テークバックも小さいわ。ストレートとチェンジアップを投げてみて」
塚原は言われた通り二つのボールを交互に投げた。
確かに言われて見れば左手も右手も縮んでいて、こじんまりとした印象をうける。
しかし、それがなんだと言うんだ?
確かによくみれば違うが、それはあくまで最初から違うと考えて凝視をしたから。
試合中に気がつかれる可能性はほとんど無いだろう。
最初のコメントを投稿しよう!