11、夢の始まり

49/54

1941人が本棚に入れています
本棚に追加
/604ページ
好太がヒットを打つ事自体が珍しいのに、多少体勢を崩しながら合わせたので、守っていた野手は多かれ少なかれその違いを感じ取った。 もちろん、知っていた野田の喜びは一塩。 マスク越しに見る好太の表情はいつもより明るく、隣の野田も口角が上がっていた。 「大和君、にやにやしてどうしたんだい?」 磯島に不思議そうに聞かれ、大和は慌てて表情を戻した。 どうやら、ヒットを打って浮かれていたのはあの二人だけではなかったようである。 次の日から普通に授業が始まり、相変わらず好太は授業中に爆睡していた。 だが、野球部に対する扱いが違う。 朝のホームルームで担任の教員が試合について触れた事から始まり、休み時間中にはクラスメートが試合に着いて聞いてくる。 最初は嬉しいような気もしていたが、段々と面倒になってきた。 それは野田と好太も同じようで、野田は特有の近寄れない雰囲気になり、好太は休み時間毎に教室からどこかへ避難している。 そして、昼休み。 これ以上は我慢ならないということで、久々に屋上へ行くことにした。 天気が良いせいもあり、屋上は何人か先客がいる。
/604ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1941人が本棚に入れています
本棚に追加