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しかし、球審の手は上がらず、判定はボール。
大和が見る限り、戸部は手が出なかったという感じではないので、恐らく最初から見送ると決めていたのだろう。
二球目と三球目はアウトローにきまり、四球目はインハイのボール球。
ここまで打つ雰囲気を見せなかった戸部であったが、五球目のストレートをジャストミート。
ボールは三塁線を襲う。
「ファールボール」
「だー! チクショウ!」
青山堂ベンチから、深いため息が漏れた。
好太は三塁塁審に長いこと毒づいていたが、戸部が六球目を打った瞬間、立ち上がる。
「走れ戸部!」
好太に言われるまでも無く、戸部は疾走している。
ボールは三遊間へのゴロ。
戸部の足ならセーフになりそうだ。
しかし、ショートが華麗にゴロを捌き、素早くファーストに投げる。
青山堂ベンチからは、ボールを受けるのとベースを駆け抜けるのは同時だったように見えたが、審判は自信を持ってアウトの宣告をした。
「こりゃ、本格的にやべーな」
好太がらしくない事を呟く。
「思ったんだけど、『走れ戸部!』って、『走れ、飛べ!』みたいでどっちなんだよってならない?」
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