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大和はもう一度サインを出した。
好太は今度、心配そうに大和の目を見る。
大和は誰にもばれないように、小さく頷いた。
それでも好太は少し心配そうだったが、セットポジションに入る。
セカンドランナーを視線で牽制してから、動き出した。
ボールは好太の手から離れる。
追加点を許すことができないこの場面で、大和が選んだのはカーブ。
ボールは孤を描いて大和のミットに落ちてくる。
好太の、縦に落ちるカーブ。
遅くて高低差があるボールに、バッターは完全にタイミングを外した。
なんとかバットに当てるが、ボールはふらふらと力無く上る。
ほぼ、ピッチャーの定位置。
好太はグラブを出す。
そこに、スポリとボールが収まった。
本塁ベース上で、大和は小さく拳を握る。
好太や野田は走ってベンチに戻っていくが、大和は疲れてしまって走る気がしない。
それでも走っているふりだけはした。
ベンチに戻った大和はゆっくりと息を吐いた。
そこからゆっくりとプロテクターを外していく。
そんな大和の元へ野田が近づいてきた。
そして、大和の肩を叩く。
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