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しばらくして、やっとサインが決まったようだ。
安達がプレートを踏む。
大和は肩からバットを離し、構えた。
安達と真っ正面から視線をぶつけ合う。
安達はポーカーフェイスで大和から視線を外さない。
強気な選手だ。
大和も視線を外さない。
往年の名捕手は「相手の目を見れば分かる」と言っていた。
名捕手ではないが、もしかしたら分かるかもしれない。
ほとんど願掛けに近いぐらいの気持ちで、大和は一球目を待った。
安達が大きく振りかぶる。
大和も左足を上げてタイミングを取る。
一球目。
安達のストレートがアウトローに。
大和は迷わず、振り抜いた。
140キロを越えるボールの勢いをその両手に感じる。
だが、芯で捕らえた。
ボールは快音を残し、ライト方向へ。
大和は走り出した。
ボールはぐんぐんと伸びていく。
十分踏み込んだので、飛距離は十分。
フェンスを越えた。
一塁塁審が両手を広げる。
大和は走るスピードを落とした。
ファール。
どうやら、少し振り遅れたようだ。
140キロのストレートには合わせきれなかった。
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