12、局地戦

21/41

1941人が本棚に入れています
本棚に追加
/604ページ
しばらくして、やっとサインが決まったようだ。 安達がプレートを踏む。 大和は肩からバットを離し、構えた。 安達と真っ正面から視線をぶつけ合う。 安達はポーカーフェイスで大和から視線を外さない。 強気な選手だ。 大和も視線を外さない。 往年の名捕手は「相手の目を見れば分かる」と言っていた。 名捕手ではないが、もしかしたら分かるかもしれない。 ほとんど願掛けに近いぐらいの気持ちで、大和は一球目を待った。 安達が大きく振りかぶる。 大和も左足を上げてタイミングを取る。 一球目。 安達のストレートがアウトローに。 大和は迷わず、振り抜いた。 140キロを越えるボールの勢いをその両手に感じる。 だが、芯で捕らえた。 ボールは快音を残し、ライト方向へ。 大和は走り出した。 ボールはぐんぐんと伸びていく。 十分踏み込んだので、飛距離は十分。 フェンスを越えた。 一塁塁審が両手を広げる。 大和は走るスピードを落とした。 ファール。 どうやら、少し振り遅れたようだ。 140キロのストレートには合わせきれなかった。
/604ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1941人が本棚に入れています
本棚に追加