12、局地戦

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当然、腑に落ちない。 戸部の実力なら県内の上位校であっても、今の段階でベンチには入れそうである。 打撃は非力だがミートは上手いし、俊足で守備もできる。 ベンチにいたら、代打から守備固めまでオールマイティにこなすスーパーサブとして活躍していただろう。 そう大和は確信しているからこそ、ますます他の高校の編成が理解出来ないのだ。 そう戸部に言ったら、「このしんちょうだと…………」と小さな声で言った。 ウエートトレーニングの普及や栄養学の進歩により、今の高校野球でパワーは欠かせない。 戸部の力では、ボールに負けてしまう。 足が速い、守備が上手いだけなら、他にも有望な選手がいる。 わざわざ、のびしろの少ない選手を選ぶ必要はないと、戸部は教えてくれた。 今、青山堂高校は釜内商業と試合をしている。 二塁ランナーは戸部。 ここは、戸部の本当の力を見せなければならない。 そのアシストが出来るなんて、光栄じゃないか。 大和はバットを握りしめ、安達と相対した。 安達は表情を変えないが、大和にはある確信がある。 安達は、弱腰なのだと。 前の打席もだが、戸部に対する牽制も逃げている。
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