12、局地戦

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よしんば折れていなかったとしても、この腕ではプレーを続けることは出来ない。 「あー、腫れてきたね」 腕が、二倍から三倍近く膨れている。 脂汗も体全体に広がっていた。 「大和君」 美鈴が小走りで近づいてきた。 その表情は、見たことが無いほど暗く沈んでいる。 「先生………」 その時に大和は悟った。 多分、美鈴も大和の状態を見て覚悟したのだろう。 「代走に川上を」 美鈴は短く、審判に告げた。 それを聞いた大和は、右手をかばいながらベンチに引き下がる。 「大和君、動かない方が良いよ」 磯島が焦りながら言う。 「大和!」 好太も叫んだ。 「ごめん、皆」 もう、グラウンドに立っていられる程の余裕は無かった。 「……泣くなよ」 ぽつりと好太が言った。 だが、涙は止まらない。 今まで、これ程悔しい思いをしたことはないのだから。 皆はこれからも戦っていく。 しかし、その戦況を見届けることすら出来ないのだ。 奥歯を噛み締める。 そうしないと、叫びだしてしまいそうだった。 ベンチに戻った大和は、そのまま医務の人に奥へ連れていかれる。 そして、大和を欠いた青山堂高校野球部は延長のすえ、破れさった。
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