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「俺さ、あの試合のあの打席、いつもと違う事を思っていた」
そう言うと、好太はピクリとした。
しかし、何も言わない。
「いつもなら、後ろに繋げる為にギリギリまで考えていた。けれどあの打席、自分が決めてやるってしか考えられなかったんだ」
内野陣は守備陣形を変えてノックを始めた。
磯島や野田が機敏に動いているのが見える。
「だから、狙い球が来て焦っちゃった。勿体なかったなぁ」
苦笑いをしたが、好太は黙ったまま何も言わない。
「あれを打ち損じなければ勝てたのにね」
「それはちげーよ」
好太の、いつにない冷静な声。
「もし、大和が打っていても大成はかわらねーし」
「そうかな?」
「そうだ」
ところで大和、と好太が右手でボールをいじくりながら言う。
「久しぶりにキャッチボールしないか?」
「そうだね、そろそろ良いかも」
「じゃあ、早速」
好太はベンチから大和と自分の分のグラブを持ってきた。
そしてキャッチャーミットを大和にはわたし、ボールを投げる。
ボールは大和のミットに吸い込まれた。
「久しぶりのくせに良い音がするな!」
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