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「うん、思ったより、調子良いみたい」
「ただ走ってただけなのにな」
好太は笑う。
「大和は、キャッチャーとして、センスあるほうだと俺は思うぜ」
「そうかなぁ?」
「ああ。だから、大和を先生はスカウトしたんだろ。実際、大和は試合でも面白いリードをしている」
そんな事を言いながら、好太はどんどん投げ込んできた。
前とは少しイメージが違うが、問題なく捕球できる。
「だからよ、大和は下手に打てるから大変なんだよな」
「下手に打てるって、変な表現だね」
「まぁな」
「けど、そうなのかも知れないなぁ…………」
大和は、ボールをなげかえす。
そのボールを好太は上手に捕球した。
「だからよぉ、俺ともう一度やり直しだな」
「やり直しねぇ…………」
「ああ。最初は皆、壁にボールをぶつけてそれを受け止めるって練習から始めるだろ? それと同じだ」
「そこまで戻るのか」
思わず、笑ってしまった。
でも、好太の言わんとしていることは分かる。
あの頃は、もっと楽に野球をやっていた。
全力で守り、全力で走り、全力で打つ。
それが、上手くなるに連れて、おろそかになった。
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