空-おもいで-想 描く

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 また今年恒例のアレがやって来た。淋しくて優しいクリスマスが……。  オレの名前は子夜(しや)。 男だ。オレは毎年の様に行われる年間行事が嫌いだ。 元より嫌いと言うわけではなかった。そう、もう三年も前になる。 あの頃は、普通に行事も楽しめた。クリスマスは勿論、七夕やハロウィンなんかも……。  三年前の十一月の始め、アイツは、彼女はオレの前から姿を消した。その事を思い出す度胸が締め付けられるかのように痛む。  あれは、ハロウィンが終わって数日後の事だった。 「子夜くん、ハロウィン終わっちゃったね」 「そうだな」 「なんか冷たいなー。もしかして子夜くんハロウィン嫌いだった?」 彼女は首を傾げて問う。こんな何気ない会話の後に絶望が降るとは双方とも思ってはみなかった事だろう。 「いや、楽しかったよ。維梨(ゆいり)と一緒だと何でも楽しい」 そう、素直な気持ちを彼女に告げる。すると彼女は顔を仄かに林檎色に染め、恥ずかしそうな顔をした。 「もう……子夜くんのばか……恥ずかしいじゃない…」 そんな風に言った維梨だったが顔は微かに嬉しそうな笑みを浮かべていたのを見た。それにはくすくすっと声を殺して、彼女にバレないように笑っていた。 「ねぇ、子夜くん」 バッと顔を上げた彼女に驚き、笑いを途中で斬り落とした。 「あー!何笑ってたの?」 むーっといった感じに膨れる維梨に子夜は言葉に詰まり、言い訳苦しいが、話をそらす。 「別に。それより維梨。」 「話そらさないでよー!」 「あーあ、良いのかな?そんな事言ってぇ?」 と悪戯っぽい声で言う。 「……な、何?」 こう言えば彼女は食い付いてくる。長年付き合っているのだから、よく解るのは当たり前だ。 「今年のクリスマス」 「そうだったぁ。ねぇ、子夜くん今年のクリスマスは何処行くの?」 目をキラキラさせて言う彼女に現金だなぁと思ったのは内緒。 「維梨は何処に行きたいんだ?」 何気なく聞いた。彼女の答えは成程と納得してしまうような返答だった。 「んとねー…」 人差し指を口元に当てがって考える維梨の癖。この姿を横で見ているのが好きだった。 ちらっとこちらを見つめる維梨に気づき疑問符が浮かぶ。 「? どうした?」 「ぇ、ううん。子夜くん、今年のクリスマスは……ずっと子夜くんと一緒に居たいな…。だから、何処にも行かない、それじゃあ、駄目かな?」
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