483人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただいまぁ~。」
ふと玄関から声が聞こえた。
仕事から帰ってきた母親を玄関まで迎えにいく亜紀。
「…お帰りなさい。」
母親に悟られないように、笑顔を向ける。
「お帰り、聡美。はやかったね。」
後ろからの声にビクッと身体を固める亜紀だが、母親の聡美は気付く筈もなく、亜紀の後ろに居る人物に満面の笑顔を見せた。
「徹さん♪ただいま。」
パタパタとスリッパを履き、横を通り抜ける母親を辛そうに亜紀が見ていたなんて聡美は気付いていなかった。
聡美が徹に抱き着くのを見ていると、徹と目が合い徹はニヤリと笑った。
亜紀は、キッと力無く睨み返す。
お母さんは気付いてない……
アイツが私に何してるかなんて。
幸せそうな母親を見ながら、
母親の幸せを壊せない……耐えるしかないんだ……
と亜紀は自分に言い聞かせていた。
最初のコメントを投稿しよう!