第二夜 イエローガーデン

2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
僕は全力で疾走している。 背後から追っ手が迫って来るのを感じる。 僕はどうしても隣街にいきたい。 ただそれだけなのに、なぜ追われる。 僕は後ろをチラチラ気にしながら必死に道を進む。 もうすぐ川が見えるはずだ。 橋を渡れば、すぐに隣街のゲートに到着する。 川が見えてきた。 川に着いたが、渡るためは、幅1メールほどの道を行かねばならないようだ。 柵はなく、少しでも風にあおられたら、川にまっ逆さまだ。 恐怖が足へと伝わっていく。 ひざがガクガクと笑い出す。 それでも、渡らないわけにはいかない。 渡らなきゃ。 追っ手に捕まったら、僕は二度と隣街にいけないだろう。 僕は一歩を踏み出す。 つま先に全神経を集中させて、一歩、また一歩と歩を進めていく。 やがて、白い道しか見えなくなる。 突然、白い一本道がふたつに別れた。 右手の道は、来た道と同じくまっすぐに伸びた隣街へと続く道。 左手の方は、横にそれていく登り坂の道。 そして、道の先には観覧車を思いおこさせるループ。 僕はカラダの向き少しかえ、左の坂を選んだ。 迷わずに左だ。 迷うはずはない。 私の目はループの先ある花をとらえていたのだから……。 白い道に1本だけ咲いている黄花のコスモス「イエローガーデン」。 私は口笛で鳥を呼ぶ。 翼をなくした鳩の姿に似た大きな鳥が東の方から飛んでくる。 羽ばたくことなく飛んでくるそれの足につかまりループを避け一気に川を飛び越えた。 行き先は「イエローガーデン」。 真上で僕は手を離し、イエローガーデンの手前に着地する。 その瞬間、白い道も青い川もすべてがイエローガーデンの黄色い花に変わる。 その中で、ひとり立でたたずむ僕は、いつの間に過大雨に打たれて、びしょ濡れになっていた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!