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男の見つめる先には街があった。
いや、正確には〈街だった〉モノが・・・
建物は壊れ、動いているものなど全く見当たらない。少し前まで人であったであろう肉の塊がそこかしこに転がっている。
〈何もできなかった〉
〈何のために俺は〉
〈なんなんだ、なんなんだよ〉
男の中で反芻される思いは、次第に膨らみ、そして【闇】となり、彼の心を徐々に蝕んでいく。
そして…
「ふ…ははっ!…あっははは!!」
「そうか、そういう事か。これが〈あいつら〉の考えか!」
男の中に怒りが生まれ、すぐに消えていった。
男はまだ呆然と立ち尽くしている。
そしてどれくらい時間がたっただろうか。男は、何かを悟ったかのように街から消えていった・・・ただ一言呟いて。
「・・・めんどくせぇ」
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