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「荒れてるなぁ…」
屋上で煙草を吹かしていると、クラスの奴が来た。
「一本頂戴。」
ポケットから出してマルボロを箱ごと渡す。
「屋上で煙草とか青春だな。和樹の事、引きずってんだろ。」
「るせー。黙れ。」
「おー怖い。」
白い煙が燻る。
確かに場所が青春くさい。漫画みたいな事をしてる。
「なぁ、琢磨はエリカが好きなの?」
「誰だよ、エリカって。」
「名前も知らないのに抱いたのか?」
そこまで言われて誰か思い出す。
和樹の彼女だ。
「……別に好きじゃないよ。」
「あんなに口説いてて?」
「…多分、和樹と付き合ってなかったら、話もしない。」
暫くの沈黙。
当然だ。親友の彼女だから寝取った。
普通の奴なら親友の彼女なら、好きでも手を出さないだろう。
「…和樹の事、嫌いなのか?」
「いや、あの女が嫌い。」
「……和樹の事、」
そこまで言って黙ってしまう。
言いたい言葉はわかってる。
和樹の事が好きなのか、だろ。
あぁ、好きさ。だけど恋愛じゃない。
俺が和樹と長く友達でいれたのは、同性だからだ。
同じ男で、自分に自身がなくて、俺を無邪気に慕う和樹が好きだった。
……今となっては、頼るどころか、俺を疎ましく思ってるだろうな。
目の前で空を游ぐ白煙。
それを見てると、少し胸が切なくなった。
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