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李家は古くから峯王家に仕える家であった。
身分はそう高くないが平穏に生きていける……下級兵士を出す家として知られていた。
「違う!!風藍肩が下がっている!もっとしっかり相手の動きを見ろ!!」
「はいっ!!」
――カンカンッ
幼い頃より毎日稽古鍛錬は当たり前。
「姉さま……お腹がすいた……」
弟を生んですぐこの世を去った母親の代わりもしていた私に人並みの娘時代はなかった。
「ここまで一人で来たの?危ないでしょ?早く家に……」
「風藍。崇沽を連れて来い」
「え……?」
「そろそろ崇沽にも剣を教える時期かもしれん」
……何を?
まだ弟は三つ。ようやく走り回ることが出来るようになったばかりだというのに……
「父上!私の時は五つの誕生日からでしたっ崇沽には早すぎます!!」
「……黙れ。崇沽は男だ。お前と同じでは間に合わん」
――カンカンカンっ!!
小さな木剣を持たされた幼い弟は容赦なく打ち据えられる。
「ぎゃうっ」
地面に押し倒され泣き叫ぶ声が痛々しい。
「ねえさまー……」
何度も泣きながらこちらに駆けて来ようとする弟を父は容赦なく打った。
その姿を直視出来ずに風藍は思わず目を逸らした。
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