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クシャルダオラは吠えたと同時に強風を巻き上げながら羽ばたき始め、低空飛行している。
蒼鬼が弓を引き縛り、軽く力を込め拡散する矢を放つ。
だが、クシャルダオラの風の鎧によって矢はことごとく弾かれてしまう。
「これならどう!?」
エトナが鉄鋼榴弾を頭目掛けて打ち込んだが、これも風の鎧に軌道を逸らされた。
翼に当たり炸裂はしたが、さして堪えていないようだった。
「チッ、やっぱり二十七粍(ミリ)じゃダメか。なら四十粍だ!」
エトナがそう言いながらより破壊力の高い榴弾を装填していた。クシャルダオラはその隙を突きエトナに風弾を放ったが、蒼鬼がエトナを突き飛ばして辛くも射線から逃れた。
「隙有り!」
煉が風弾の隙を突いてクシャルダオラの体に幾撃もの斬撃を放ったが、致命傷にはなり得ず、クシャルダオラは崖の淵辺りへ飛翔し、雪の上に四肢を付けた。
「今だ!」煉が即座に肉薄しようとするが、風の鎧に吹き飛ばされ、雪に足を取られた。
「しまっ……」
その隙に今度こそ風弾を当てようと頭を高く上げて発射用意をする。
『いかん、殺られる!』
煉はすぐさま飛び退こうとするが、いかんせん足場が悪く、立ち上がれなかった。「危い!」エトナが叫ぶがやはり立ち上がれないでいた。
風弾が開放されるその寸前、上空から青いモノが高速で落ちて来た。
「ほら、な?」
蒼鬼が肩を竦めて呟いた。
雪を巻き上げたその青いモノはクシャルダオラの頭部へと降下。
接触と同時に風が爆発し、周囲の雪が吹き飛ばされる。
「カノン様華麗に参上!」
のたうち回る風翔龍を背に、青き大体を肩に掛け、カノンが名乗りを上げる。
剣を持たぬ手には銀の角。
一角が消失している風翔龍の頭部。
そしてなにより、蒼は片目を真紅に染め上げていた。
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