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『あの目は一体…?』
煉は場違いだと思いつつも、ポカンとしながら思っていた。
「さて、大丈夫か?煉」
ポカンとしたままの煉にカノンが声を掛けた。
煉はハッとして、
「あぁ、大丈夫だ」
そう言いながらゆっくり立ち上がった。
足取りには危なげな感じは一切無い。
「さて、じゃあコイツを片付けるか」
そう言いながらカノンはクシャルダオラに向かって振り返った。
「そうだな……」
煉は何となくの引っ掛かりを感じながらも言った。
「応」
「オッケー」
蒼鬼とエトナもそれに応じる。
舞台は整い、役者は揃った。
「それじゃあ一丁、ヤりますかぁ!」
クシャルダオラはすでにその二つの目を以てしっかりと、しかし一抹の不安を宿した両眼で四人を睨み付けていた。
最初に動いたのはカノンだった。
氷結した雪の大地を蹴り大きく跳躍しつつ、右翼を一閃した。
刃は弾かれる事なく翼を切除し、翼はその機能を失った。
次に動いたのは煉だった。
煉はカノンと同じ様に、しかしより強い力で地を蹴り跳び上がり、さらに大気を蹴り、より加速しつつ赤い気を放出している双刃を大きく振り上げ左翼を切り付けた。
紙を斬る様に翼を断絶し、左翼も機能を停止した。クシャルダオラはその場から離脱しようとしたが、それは許されなかった。
左半身を電撃を宿した矢が貫く。
さらに右半身は爆裂する弾丸が穿った。
゙―――――――――――――!!!゙
クシャルダオラは悶え苦しんでいる。
「行くぞ!煉!」
「ああ、任せろ!」
二人はクシャルダオラの前後に立ち、同時に跳び上がる。
カノンは大剣を左側へ寄せ、力を込める。
煉は跳び上がりながらもさらに空を蹴り、速度を上げる。
そしてカノンは渾身の横一閃を放ち、煉は迅速の舞を空中で披露する。
命を、魂を斬り抉られた風翔龍は、呆気なく倒れた。
純白の雪を紅に染めつつ。
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