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「まずいな……」
森と丘、そのフィールドの一つである細長い道。
そこを疾走している青年が一人、一心不乱にその水色の髪をなびかせて駆けていた。
青年は防具を何一つ身に着けていない。
腰には一本のナイフ。とは言っても刃渡り15cm程の剥ぎ取りナイフではなく、戦闘様に造られた剥ぎ取りナイフの倍程の長さを持つ[ハンターナイフ]だ。
しかし、怪鳥を相手にするには心許無い。
その速度は、一般人ならば楽々距離を取れる程。
だが、逃げる相手は人ですらない。
巨躯が地を踏み締め、撥ねる音が連続で聞こえる。
青年は後ろを盗み見る。
そこに映るのは、先程こちらを発見し、追撃しようと走る桃色の大怪鳥。
ハンターにとっての最初の関門、[イャンクック]そのものだった。
「たッ!」
横に現れた空間に飛び込む。
怪鳥は身を滑らせながら倒れ込んだ。
その隙に離れようとしたが、
「……ッ」
痛みに顔をしかめる。
同時に足を押さえる。
どうやら足を捻ったらしく、立ち上がれない。
怪鳥が立ち上がり、青年の方へ首を向ける。
「まず……」
青年は顔に渋面を映す。
怪鳥は頭を高く持ち上げる。
そこに、予期せぬ珍入者が現れた。
青い影。
一目で得た感覚は、それだった。
上から現れたその珍入者が落下と同時に手に持っていた鉄の塊を怪鳥の頭に叩き込む。
突然の強襲に何の反応も出来ずに鉄塊の直撃を受ける。
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