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(その時ひとみにある日の家でのワンシーンが浮かんできたのです)
父「東京にでるだと!?なにをバカなこと言い出すんだ!この家を捨てて東京に出ていくというのかそれなら二度とこの家の敷居をまたぐな!」
母「お父さんそんな言い方…」
ひとみ「お父さん…私には東京に出てどうしてもやりたいことがあるんです」
父「ラジオのディスクジョッキーだかなんだか知らんがそんな訳のわからんチャラチャラした仕事なんか俺は絶対に許さん!」
ひとみ「お父さんになんと言われようと私は東京に行きます!」
父「わかった!もうお前は娘でもなんでもない!二度と帰ってくるな!どこへでも勝手に行け!」
母「ひとみ…お父さんに謝んなさい!」
ひとみ「………」
『娘は高校を卒業後私の反対を押し切って東京へ出ていきました。つい頭に血がのぼって大人げなく心ない言葉を娘になげつけてしまったことを私はずっと後悔してきました。なぜあの時もっとちゃんと話を聞いてやらなかったのか…なぜ娘がやりたい道を素直に応援してやれなかったのかとあの日以来私はずっと思っておりました…』
ひとみ(お父さんそんなに私のこと考えてくれてたの…)
『それでも私はどうせしばらくしたら娘は帰ってくるものとタカをくくっておりました。都会で一人で暮らすなど甘いことではありません。あの娘が孤独や挫折に耐えられるはずはないすぐかにしっぽをまいて帰ってくるにちがいないそう考えていたのです。しかし現実は違っていました次の春もその次の春も娘が故郷に戻ってくることはありませんでした。娘が再びこの故郷の土を踏んだのは妻が亡くなった十年前のことでした…娘は仕事の都合で二日間しか滞在することができませんでしたそれでも妻を失って気落ちしていた私は娘に会えて本当にうれしかった話したいことも聞きたいこともたくさんありました。しかしどうしても声をかけてやることができず結局ろくな会話もできなかったのです本当に バカな父親です』
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