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美しいドレスに身を包む僕も、また美しくしなければならなかった。
久しく鏡など見て居ない。
恐る恐る鏡台の前にある小さな丸椅子に腰を掛ける。
僕が腰を掛けたと共に鏡に映ったのは、少し気弱そうな少年…もちろん僕自身だ。
肌は白粉を塗る前から少し青白く、腕や首は歳の割には発達して居ない様に思えた。
背丈も平均以下では無いだろうか。
髪は青味がかったアッシュグレイ。まるで青空を反射した冷たい雪の様で、髪の毛自身にも強さは感じられない。
前に鏡の前に座った時には肩に掛からない程度の長さだった髪が、肩甲骨の辺りまで伸びている。
それに比例して前髪もまた長く、片目が隠れる程に。
その前髪から覗く右目もまた青味がかったグレイで、全体的に色味を感じない。
僕は何とも言いがたい恐怖を感じて居た。
何故なら、鏡に写された自分の姿は残酷なまでに…不治の病を抱えた余命僅かな僕をそのまま表して居たのだから。
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