木々彩られし豊穣祭

7/9
前へ
/33ページ
次へ
美しいドレスに身を包む僕も、また美しくしなければならなかった。 久しく鏡など見て居ない。 恐る恐る鏡台の前にある小さな丸椅子に腰を掛ける。 僕が腰を掛けたと共に鏡に映ったのは、少し気弱そうな少年…もちろん僕自身だ。 肌は白粉を塗る前から少し青白く、腕や首は歳の割には発達して居ない様に思えた。 背丈も平均以下では無いだろうか。 髪は青味がかったアッシュグレイ。まるで青空を反射した冷たい雪の様で、髪の毛自身にも強さは感じられない。 前に鏡の前に座った時には肩に掛からない程度の長さだった髪が、肩甲骨の辺りまで伸びている。 それに比例して前髪もまた長く、片目が隠れる程に。 その前髪から覗く右目もまた青味がかったグレイで、全体的に色味を感じない。 僕は何とも言いがたい恐怖を感じて居た。 何故なら、鏡に写された自分の姿は残酷なまでに…不治の病を抱えた余命僅かな僕をそのまま表して居たのだから。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加