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「じゃあ、憲一と綾ちゃんは別の部屋で仮眠をとってくれ」
「……え?」
海の言葉に綾が恥じらいを見せた。
「憲一だったら大丈夫だから」
「祐君…」
綾は憲一の顔をちらっと見ると、小さくお辞儀をした。
「あ…よろしくね、綾さん」
憲一の軽い女性恐怖症はどうにもならないようだ。
「んじゃ、三時間後な…」
憲一は部屋を出ると同時に、そう言い残した。
「本当は不安なんじゃないのか?」
海はスナイパーライフルを組み立てながら言った。
「そりゃそうでしょ。いつ死んじゃうかわかんないのに…」
AEPという法律は人の性格まで変えてしまうものなのかと思わせるほど、祐介の性格は暗くなっていた。
「…そうじゃなくて、綾ちゃんの事だよ。憲一と二人きりにしといて」
海は祐介の心を察したのか、無理矢理質問を変えた。
「(ナイスフォローだ俺!!)」
「大丈夫でしょ、憲一なら。女の子と目を合わして喋れないんだから」
「そうだよな!」
海と話している時、祐介は少しだけ『死』の恐怖を忘れる事ができた。
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