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「イオンさん、ありがとうございました。これはほんの気持ちです」
太陽なんかとっくに沈み、月はそろそろ真上に来るだろう。
イオンはある部屋で、男達に囲まれ軽い接待を受ける所だった。
煙突に引っかかったのか、イオンは煤だらけで真っ黒だ。
「いえ、今年は……」
「何か用事でもあるのですか?」
「ええ――……大切な」
疲れきったイオンにはもう一つ、大切な仕事が残っていた。
せっかく用意されたご馳走すら目に入らないようで、時計を気にしている。
「それではいつも通り、口座にお給料の方を……」
「ええお願いします……それでは僕はこれで」
帽子を脱ぎ、軽く挨拶するとイオンは慌てて走っていった。
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