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チ…チ…チ…チ…チ…チ…チ…チ…
こたつの上に置いた時計の針が、僕に一秒毎の時を伝える。
いや、僕だけじゃない。
もう一人、僕の傍で一人の女の子が、一緒に秒針が時を刻む音を聞いている。
真剣な表情で時計の針を見つめている彼女の姿は……僕が言うのも何だけど、とても可愛い。
たかが年越しなんかで、そこまで真剣にならなくてもいいのに、なんて事を思いながらも、僕も習って秒針の動きを目に捉える。
なんだかんだ言ったり思ったりはしてみるものの、僕だってやっぱり気になるのだ。
「あと一分……だね」
「……うん」
僕の言葉に、秒針から目を反らさないまま、彼女は頷く。
ほんの、一年足らずの付き合い。
だけど、誰よりも信頼出来る人。
誰よりも、大切に想える人。
そんな人と、一緒に新年を迎えられたらいい―――そんな想いを胸に、僕と彼女は今まさにその望みを叶えようとしている。
その望みは、口に出して確かめ合ったわけでも、無言のテレパシーで通じ合ったというわけでもないけれど。
でも、きっと彼女もそう願ってくれていると、僕はそう思っているし、思いたい。
その方が、断然気分も良くなるというものだ。
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