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チ…チ…チ…チ…
「…………」
「…………」
秒針が、大きな6の数字を通り過ぎる。
もう少し。
もう少しで、僕達は新しい年を迎える事になる。
それは、言葉にしてみれば、そんなに大した事ではない。
けれど、共に新しい時間を共有したいと思うこの気持ちが、一体どれ程のものなのか、そんなのは、言葉ではとても言い表せない。
だから、僕は何も言わない。
彼女も、何も言わない。
何も言わずに、一心に秒針を見つめ続ける。
5秒……4秒……3秒……2秒……1秒―――――――――――
「あけまして―――」
おめでとうございます。
少しのフライングと共に発された僕の声は、その言葉を最後まで言い終わる事はなかった。
頭の中が真っ白になって、彼女の姿が視界から消えて。
そこで、僕の意識はシャットダウンした。
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