⑮歳

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私の居場所はここにはない…私はこの家に必要とされていない…。 そう思った。 誰かに必要とされたかった。誰かを必要と思いたかった。だから…家を出た。 十月の涼しい季節。 私は一人ミナミの通称「ひっかけ橋」にいた。 何をするでもなく、ただ行き交う人をぼーっと見ているだけだった。 時間は夜の八時頃。 その時の私ははたから見たらさぞ滑稽だったことだろう。服は制服のまま、しかもダサイ制服。顔は化粧何て知らない頃だったからもちろんスッピン。不細工な顔。 鞄は小さいトートバック。 唯一の救いはスタイルだけだった。身長が高い割には体重はガリガリに近いくらいになかった。 財布の中身は無いに等しかった。 誰でもいい、一晩どこかで寝かしてくれればよかった。 でも、やっぱり誰も声をかけてこない。当たり前だ。 制服を着た上にダサイとくれば誰も声をかけたい何て思わないだろう。 分かりきっていたことなのに、それでもまだ、心のどこかで期待をしている自分がいた。 情けなくて涙が出そうになる。 そんな気を紛らわすように周りを見た。 近くではキャバクラの人達が男の人に声をかけていた。 キレイなドレスを着て、化粧もし、頭もハデに巻いている。羨ましかった。 次第に歩いている人達もまばらになり、気付けばさっきとはうって変わって、夜の街になっていた。 その中で一際目立つ集団がいた。今でこそ全国で知られているが、当時はあまり知られていなかった『ホスト』だ。私はその時存在も、そんな仕事すらも知らなかった。 その時は興味何かなかったし、相手にされないことも分かってた。その時はまだ… ふと、時計を見ると時刻はすでに十一時を回っていた。 さっきのキャバクラの人達もすでにどこかへ行ってしまっていた。 いつまでもここにいても仕方ない。 そう思った私は行く当てもなく、ただ夜の街をブラブラと歩いた…。
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