⑮歳

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フラフラ歩いていると、橋の上で見た、キャバクラの人達がいた。 皆がこっちをじっと見てくる。 そんなに怪しいのだろうか…いや、確実に怪しいだろう。 平静を保ってその人達の前を通り過ぎようとすると、男の人が声をかけてきた。 「さっき橋の上におった子やんなぁ?皆で心配しとってんけど…。大丈夫?もしかして家出してきたんと違う?」 ビックリした。まさか全然知らない人達に心配されていたなんて…。それもこの人はちょっと怖面…。意外だった。頷くことしか出来ないでいると、さらに驚きの言葉を私に投げかけてきた。 「声、あんまりかけられへんかったやろ?最近この辺も終わってるからなぁ…。こんな時間までうろうろしてるってことは…あれちゃうん、今日寝るとこないんちゃう?よかったら店紹介したげんで?」 ??店?紹介って?何のことかさっぱり分らなかった。 余程困った顔をしていたのか、キョトンとアホ面を晒していたのか、私の顔を見て大笑いされた…。恥ずかしい…。男の人は笑いが止まらず、さらに困っていると、後ろにいた女の人が話してくれた。 「ごめんね。お店ってゆうのは、うちらみたいな夜の仕事のお店のことやねん。紹介したるって言うのは知ってるお店の店長さんに、そこで働かしてくれるか聞いたげるって意味。行く当てないんやったら寮とかもあるし、すぐお金になるからそうしたら?」 よく分からなかったけど、すぐお金が出来る、住む家が出来る。それだけで私には十分だった。 分けも分からないまま、どんな仕事かも分からず、ただ私は頷いていた。 たったそれだけのことで、私の人生が大きく変わるとも思わず…。 人生で最初のターニングポイントを、頷くことで簡単に、決めてしまっていた。
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